宇多津には古くから寺社が立ち並び、今なお古き良き景観を残しています。
その数1社9か寺。
そのうちの一つである西光寺で開催された「うたづ寺子屋」にお邪魔しました。
夏休みに開催されるこのイベントでは、町内の小学生が地域の歴史について学ぶことができます。
今回、宇多津の昔の様子について教えてくれたのは、
瀬戸内海歴史民俗資料館の館長、松岡明子さん。
江戸時代以前に描かれた絵画や絵馬から、当時の様子を読み解く方法を学びました。
絵画はどう読み解く?
まず、高松城下と東かがわ市の水主神社、観音寺市街地を描いた3件の絵画をもとに、
古い時代の絵画を読み解くにはどのような見方をすれば良いかを教えてもらいました。
それぞれの絵を見てみると、人物やお城が大きく描かれていたり、あるはずのものが描かれてなかったり…。
実際に見る景色とは違う部分がいくつかありました。
この3件の絵画から学んだのは、描かれたもの=真実とは限らないということ。
また、いつ・どこで・誰が・どのように・なぜ描いたかについても考えることが、当時の様子を知ることに繋がるそう。
実際にあるべき姿とは違った「変」な部分に注目すると、より当時の事情や、絵師が絵画に込めた思惑が見えてきました。
松岡さん
「今は写真やテレビがあって、すぐスマホなどで調べることができますが、
この絵画が描かれた時代には、絵が情報を得るための重要な手段でした。
しかし、絵に描かれたものがそのまま正しいというわけではありません。
その時の伝えたい事によって、いろいろ工夫されたり、強調されたり、省略された部分があります。そのことを意識して見ることが大切です」
絵馬を見てみよう!
このように昔の絵画を見る時のポイントを学んだ後は、
宇多津の昔の様子が描かれた「網浦眺望青山真景図」を実際に見ながら、当時の様子を読み解きました。
この絵馬の中には宇多津の寺社が描かれています。
消えて見えなくなっている部分もありますが、この絵馬の表裏に書かれた文字から、
安政2年(1855)に宇多津で池田屋、若木屋などが、絵師の萬年に宇多津の町(現在の古街あたり)を描かせたものだということが分かります。
さらに、裏面の墨書からは、それぞれの家に関わる人たちの安全や子孫繁栄、商売繁盛などの願いが書かれていることも読み取ることができます。
さらに詳しく見ると、絵馬の左上にある鳥居が他の物に比べて、大きく描かれています。
これは、こんぴらさんへの参詣道を示すもので、宇多津にこんぴら参りをする人が多く訪れたことを表しています。
また、絵馬の右下の部分には、港で働く人々の姿や多くの船が見えます。
これは宇多津がこの時代に港町として栄えていたことを示しています。
沖に大型の船が見えますが、これは江戸時代の宇多津港がまだ浅く、大型船を受け入れられなかったため、小船で沖の大型船まで向かい、荷運びをしていたことを伝えています。
このように、宇多津の繁栄の様子と家内安全などの願いがこもったこの絵馬には
町の歴史にまつわるたくさんのヒントが隠されているのです。
松岡さん
「この絵馬からは、昔の宇多津の様子だけではなく、当時の人々が伝えたかったことなども知ることができます。
細かい部分を見ていくと、さまざまな情報を読み取る事ができるので、皆さんも興味を持って観察して、宇多津の文化財を大切にしてくださいね」